ナイルの向こう側

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【感想・ネタバレ注意】ドラゴンクエスト ユア・ストーリー

Dragon Quest Your Storyを観てきました。
この作品は『ドラゴンクエスト天空の花嫁』が元になっているようですね。

はじめに

まず、筆者はドラクエ5どころかドラクエというゲーム自体プレイしたことがないということを断っておきます。じゃあ、なぜ突然ドラクエの映画を観ようと思ったのか?それはスマブラで勇者がDLCとして配信されてドラクエに興味が湧いたから…という率直なものです。一応観に行く前に映画公式サイトであらすじやキャラクターなどは確認しておきました。

おそらく本作はドラクエ5をプレイした経験のある人向けに作られているんだと思います。ドラクエ未経験者が飛び入りで観てきた感想をお送りいたします。

第一印象としては

普通に面白かった。

世界観は中東〜東ヨーロッパを思わせるようなファンタジー作品という印象。ファンタジー好きとしてはこれだけでワクワクできる。少年主人公が成長し大人になり結婚しやがて父となるストーリー。事前に調べた際に大河ドラマと形容されていたとおり、確かに大河風ではあった。結婚相手を二人のヒロインから選ぶシーンでは、"愛"を取るか"富権力"を取るかで葛藤する主人公が感慨深い。

衝撃のラスト

終盤までは王道とも言えるストーリーがつづくが、ラストシーンでとんでもない超展開が待っている。実はこの世界は真の意味でゲームの世界であり、主人公はドラクエの世界を体感できるVRドラクエをプレイしている現実世界の人間という真実が明かされる。ラスボスとして登場するはずだった魔王ミルドラースは、あるプログラマーがゲームプログラムに仕込んだコンピュータウィルスで文字通りゲームの世界を破壊する存在として登場した。ウィルスはゲームは意味のないものと吐き捨て主人公を現実世界に戻そうとする。だが、ゲームは立派な思い出だとウィルスの言葉を否定し立ち向かう。そこにお供のスライムがあらわれ、実は自分はワクチンだと主人公に告げ、その力を使ってウィルスを除去する。
本作が賛否両論あると感じた瞬間だった。

ドラゴンクエスト ユア・ストーリーを斬る

映画を観終わった後、世間の評判を調べてみた所どうも辛口の評価が多いようだ。
原作の内容を端折り過ぎているという声もよくみられる。原作がどれほどの長さか把握していないが、103分の映画にもれなく原作を再現しようとするのは不可能だろう。この手の作品で陥りがちな点ではある。
やはり最も槍玉に挙げられやすいのがラストシーンだろう。あまりにも唐突な上に、見方によってはドラクエの世界観を壊すような展開ともとれるためファンにとっては受け入れがたい真実なのかもしれない。
ウィルスを仕込んだプログラマーの正体も謎で、劇中ではゲームが嫌いでウィルスを作ったと語られただけである。プログラマーが気晴らしのために隠しデータをゲーム内に忍ばせておくという例は珍しくなく、『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』における有名なバグ"なぞのばしょ"もその一つではないかと言われている。ただ、ゲームが進行しないように意図的にプログラムを組んでいるというのは明らかに問題点だが。
ウィルスの「ゲームはなんの意味もない」という主張も時代に合わないとする意見も見られる。昨今、esports化が進みゲームは単なる遊びという認識は薄れつつある。ただし、日本のゲームは遊ぶために作られている作品が多いのも事実。ドラクエもその一つだ。esportsの分野で日本が遅れているのはそういった背景もある。まだまだゲームは遊びという認識を持った日本人は多い。

評価されない理由はなぜか?

どうしてこれほどまでファンからの評価が低いのか?
それはファンが持っている"先入観"が大きく影響している可能性が高い。ドラクエは1986年に登場して以来シリーズ化され、長きにわたって愛され続けるRPGの金字塔とい言っても過言ではない。長いシリーズほど世界観が固まっていて、ファンの間でも一定のイメージが定着していることが多い。本作はラストの展開も相まって、ファンの持つ"ドラクエのイメージ"から大きくかけ離れたあるいは想像していたものと違ったという印象を抱いてしまったのだろう。
そして、周りの評価も少なからず影響していると考えられる。映画を観る前に感想を調べていく人もいる。そこで悪い評価が多く目についてしまい、思考が悪い方向へと動いていってしまう。
そういった先入観や周りの評価が客観的な評価の邪魔になっているのだ。
また、本作がゲームの世界を旅する物語という事実が事前に明かされていれば、ファンとの認識のズレもここまで大きくならなかったかもしれない。